韓国訪問記・2
2016年5月17日・18日。韓国を訪問してきました。今回の目的はナヌムの家でハルモニ達に面会する事、水曜デモに参加することです。
17日。ナヌムの家。
ナヌムの家の入り口前にて。お亡くなりになったハルモニ達の銅像が並んでいます。手前は歴史館入り口。
金学順ハルモニらの銅像。
銃剣と日の丸は大日本帝国軍を意味する。左は女性の青春を象徴する花、右は平和を象徴する鳥。慰安婦にさせられたことによりどちらも散ってしまった、という意味だとのこと。
ハルモニ達が生活する建物の入り口。ナヌムの家は風光明媚な山村の中にありました。
元慰安婦被害者・李玉善(イ・オクソン)ハルモニと私。私が面会を許されたのは彼女一人だけでした。その理由は、私が日本軍人の直接の子孫であることを告げると、ハルモニたちは過去を思い出して辛い思いをすることになるかもしれないから、です。(実は私もうすうすそれを心配していました。)李玉善さんはそれでもかまわないといって会ってくれたのです。彼女の証言はここに。
最初、彼女は腹を立てているような感じでした。『私に会いに来て一体何を聞きたいのか。これだけ色々な人が証言し、資料も発掘されている、なのに日本はなぜ私たちに謝罪しないのか。謝ることがそんなに難しいのか。90年代の民間募金(女性のためのアジア平和国民基金)も、私はもらった覚えはない。慰安婦をみんな殺し、資料も焼いておきながらシラを切っているのは酷いではないか、日本の軍人だってそれを見ていた人が沢山いるはずなのになぜ黙っているのか』そのようなことを話されました。
私は彼女の話に、というより彼女の存在自体に圧倒されて言葉を失いました。慰安所から何度も逃げ出そうとし、そのたびに捕まってもう逃げられないようにと手足を刃物で切られた、その傷跡も見せて頂きました。『慰安所というのは死刑場のような所だった。あの時私が死ななかったのは神様が助けてくれたからだ。』・・・・・「この人は絶対にウソを言ってはいない」私はそう感じました。誰でもそう感じると思います。慰安婦問題を否定したり、彼女たちをウソ吐き扱いする人達こそ実際に会ってみるべきです。こればかりは言葉では説明できません。実際に会ってみることです。
キムジュンギ監督さん、イ・ギルドさん、通訳のイ・ユンスさんに連れて行って頂いたのですが、みんな床に正座のような姿勢で聞いていました。私は、『今私が謝罪したら受け入れて頂けますか。本当はこれを日本という国がやらなければ意味がない、私はただの一民間人で日本を代表できる人間でも何でもないが、日本軍人の直接の子孫としてあなたに謝罪したい、我々の先祖の野蛮な行いによりあなた方に一生の苦痛を与えたことを心から申し訳なく思う、大変申し訳ありませんでした』私はそう言って正座の姿勢のまま手をついて頭を下げました。するとハルモニはこう言ってくれました。『あなたがやったことではないのだからあなたが謝る必要はない、あなたにこんなことをさせてしまって申し訳ない。』
後で通訳の人が言うには、『ハルモニがあんなことを言うとは驚いた、普通は言わない、ハルモニもちゃんと人を見て話をしているのだなあと思った』とのことでした。
そして最後、ハルモニはなんと日本語で『私は日本語が分かる。でもめったに使わないから忘れてしまった』と言いました。私はびっくりしました。それまで通訳を介して話していたのですが、私の日本語もある程度理解していたのかもしれません。通訳の人が言うには『ハルモニ達はみんな日本語が分かるんですよ。でも普段は、過去を思い出すので使わないんです』。
確かに最初はハルモニは怒ったような感じでした。今までに「軍人からお金をもらったのか」などという質問をしてくる日本人もいたとのことで、さらに私は軍人の子孫でしたから、怒りの気持ちが湧いてきたのだろう、と思います。それでも最後はなんとなく穏やかな雰囲気になれたかもしれません・・・。
私は何か、ハルモニ達の傷を癒すことをしてあげたいと思って来たのですが、自分がどれだけ無力か思い知らされました。私が土下座して謝罪してもそれはただの自己満足に過ぎず、日本という国がそれをやらなければ意味が無いのです。唯一の解決の道は、日本が、慰安婦制度が国家犯罪であったこと、その法的責任を認め、公式な謝罪と賠償を行う事、それしかないのです。
最後に、微力ながらハルモニ達のために役立ちたく、ナヌムの家に日本円で約10万円ほど、寄付させて頂きました。(キムジュンギ監督さんから頂いた謝礼金の一部です。)
翌18日、水曜デモへ。相変わらず少女像は鎮座しています。隣では大学生たちが24時間、交代で見張りをしていました。なぜ朴槿恵政権はあんな合意をしてしまったのか・・・
少女像の隣で。
この日は400人くらい集まっていたそうです。すごい盛り上がりです。
お坊さんが太鼓を打ち鳴らしてました。
小学生たちも参加。
挺対協代表・尹美香(ユン・ミヒャン)さん。
左は李容洙(イ・ヨンス)さん。右が東ティモールの被害者イネス・デ・ジェススさん。遺影はこの前日にお亡くなりになったイ・スダンさん(左)とコン・ジョミョプさん(右)。
二人の遺影に水を手向ける李容洙さん。
今回は東ティモールの関係者や黒人・白人の方達も多く参加していました。日本からも、「アジア連帯会議」(ちょうどこの時ソウルで開催されていた)に出席する人達が何人も来ていました。
今回はナヌムの家でハルモニに直接話を聞いたのは本当にいい思い出となりました。実際に話をして初めて、絶対にウソではないんだという事が分かりました。言葉が通じなくとも人間同士、伝わるものがあるのです。自民党関係者や否定論者の人達こそ実際にデモに参加しナヌムの家を訪れてみるべきでしょう。(終)