韓国訪問記・1
●2015年12月15・16日、わたくし根本は韓国を訪問してきました。目的は水曜集会(挺身隊問題対策協議会が主催する慰安婦問題抗議集会)に参加し、あちらでどのような事が行われているのか実際に体験すること、挺対協にいくばくかのお金を寄付させて頂くこと、そして今まで祖父のインタビューなどに来ていただいた韓国の方たちに会うことです。私は海外に行くのも初めて、飛行機すら初めてだったので結構、緊張しました。
15日。成田空港内。
機内の様子。
今回の訪問に同行してくれた方々。左から、
ソン・ギョンソプさん(キム・ジュンキさんの友人)
キム・ジュンキさん(慰安婦アニメーション"Her Story"製作監督)
上嶋茂太さん(共同通信社 社会部 記者)
イ・キルドさん(YTN ディレクター)
ソウル中心部の鐘路・仁寺洞(チョンロ・インサドン)地区にあるYMCAホテルというところに宿泊したのですが、道路を挟んで向かいにこのような繁華街が広がっていました。夜11時頃に一人でこの辺一帯を歩いてみましたが、まったく身の危険は感じませんでした。治安は相当に良いと感じました。
翌16日水曜日。デモに参加するため日本大使館前に。これがあの有名な、旧日本軍の性奴隷とされた朝鮮人少女の像です。思っていたよりすごい迫力です。『この問題をどうしてくれるの』と訴えかける力を持っています。私が今回の訪問でもっとも感銘を受けたのはこの像です。
日本ではあまり知られていないのかもしれませんが、この像には「影」が彫ってあるのです。そしてその影はおばあさんの形をしているのです。日本の軍人により数千回もの強姦を受けた少女の心と身体の傷は、おばあさんになった今でもずっと続いているのだ、という意味なのだそうです。そして蝶は、被害者を蝶になぞらえているのだとのこと。
正面から。来訪者が巻いてくれたショールや毛布など。肩にいるのは小鳥。まっすぐに日本大使館を見据える目。やはりすごい迫力です。日本人(のウヨクや否定論者たち)にとっては、この像は相当にイヤでしょう。現に、安倍総理は妥結の条件としてこの像の撤去を要求しましたし、カナダなどでは日系人による設置反対運動が起きていると聞きます。(私は設置大賛成です。これを設置されるのがイヤなら日本側が誠意ある対応を取ればいいだけの話なのです。)
しかしそれにしても、なぜ加害者側が「妥結」や「要求」などという言葉を使えるのでしょうか。もし北朝鮮が、『拉致問題を妥結してやってもいいがその代わり被害者家族が二度とこの問題を蒸し返したり国際的にアピールしたりしないことを要求する』などと言ってきたら日本人はどう感ずるのでしょうか。
像の隣にはこのような石碑が埋め込んであります。
デモの開始は昼12時から。だんだん人が集まってきました。
『日本軍「慰安婦」問題解決のための水曜集会』 『日本は公式な謝罪と賠償を!』 などと書かれた横断幕。
私は、この集会はもっとこじんまりやっているのかと勝手に思っていたのですが、後から聞いたところによるとこの日は500人もの人が集まり、時には1500人くらい集まる日もあるとのこと。自分は帰国してから、韓国でこれだけ人々の関心事になっている重大問題が、なぜ日本ではみな無関心(なるべくこの問題を無視したがる)なのか、一種不思議に思ったのです。
その500人の前で紹介される私。隣はキム・ジュンキ監督。向こうの赤いダウンジャケットの人がYTNのイ・キルド ディレクター。
そして彼らの前で自己紹介とスピーチをする私。今日はなぜ日本から来たのか、また祖父の証言内容などをお話ししました。『これからも国際社会にこの問題をアピールし、少女の像を世界中に建てましょう、被害者たちの心と身体の傷が完全に癒され、この問題が完全に解決される日までは、この問題は永久に追及しなければならない、自分は日本人だが日本の味方は1%もしない、100%被害者側の味方です』と言いました。(もっともその日が来るかは難しいと思います、今の日本政府の態度では。)参加者からは拍手を浴びました。日本人だからといって非難されるようなことは全くありませんでした。
今年6月、私は祖父の証言をキム・ジュンキさんのアニメーションの題材に提供しました。その時の謝礼金として約30万円を受け取っていたのですが、そのお金はやはり自分が受け取るべきものではないと思い、とりあえずそのうち10万円を挺対協に寄付させていただきました。右は挺対協代表の尹美香(ユン・ミヒャン)さん。残りは来年また寄付するつもりです。
水曜デモ終了後、挺対協が運営する「戦争と女性の人権博物館」へ。色々な証拠資料や証言などが展示されておりました。しかし残念ながら撮影禁止でした。唯一撮影が許されていたのはこの少女像のところのみ。この博物館は行く価値があります。入場料は大人3000₩です。
●韓国訪問を終えて~上のほうにも書きましたが、日本に帰国してから、これだけ韓国で関心を持たれている重大事がなぜ日本では多くの人が無関心なのか、不思議に感じました。被害を与えた側と受けた側・・・苦しみを訴える側と無視する側・・・埋めがたい溝というか・・・。自分は韓国人のやっていることが正しく、日本がやっていることは間違っていると思います(昔の蛮行も、今の態度も)。そもそも日韓基本条約の時に問題にならなかったのは、朝鮮女性が儒教文化における「恥」の意識から被害を訴えることができなかったこと、日本が証拠文書を徹底焼却し多くの「慰安婦」が死に至らされてしまっていたため問題が明るみに出にくかったこと、日本の自民党が韓国の軍事政権と癒着して戦争被害者の声を抑え込んでもらっていたこと、などが原因だと思います。議題にあがってすらいなかった事を「解決済み」とする論理に執着する日本政府の対応はどうなのでしょうか。真の和解や友好を実現するためには、相手の訴えに耳を傾けなければならないと思います。日本が、被害者たちが本当に納得するような誠意ある対応をとるまでは、この問題に対する追及は永遠に続くでしょう。
●それにしても、今回は本当に有意義な訪問でした。もっと早く水曜集会に参加したかった。この集会は92年の開始以降、すでに1200回以上も行われているのです。正直に白状しますと、私は祖父の証言を直接聞くまで、慰安婦問題は何が本当で何がウソなのか、よく分かりませんでした。人やマスコミによって主張が全然違うからです。また、ネット上の某掲示板の影響を受けて、韓国叩きをやっていたこともあります。いわゆるネット右翼というやつですね。今ではそういった自分の無知や愚かさを恥じています。同行してくれたソン・ギョンソプさんによると、この水曜デモに参加した日本人も過去に大勢いるし、ナヌムの家のスタッフをやっている日本人もいるとのことなのです。自分は本当に、40年以上もこの問題をろくに知らずに生きてきた自分を恥ずかしく思ったのです。
●次回は来年の4月か8月に行く予定です。8月14日は金学順(キム・ハクスン)さんが初めて実名で名乗り出た記念日だそうで、集会には多くの人が集まるとのことです。(終)